2008年1月2日水曜日

箱根駅伝往路〜順大の5区途中棄権は早まった?

今日の箱根駅伝5区では衝撃的な順天堂大の途中棄権があった。5区23.4kmのうち、22.9km地点というから最高点を過ぎて下り終わる手前、芦ノ湖畔にもう少しで出るというあたり。ゴールまではわずか500mしかないところだけに悲劇が強調された。
鍛え抜かれたはずの、しかも名門の順大の選手がどうして?と誰もが思うはずだ。
ところが、なされている報道には誤解させるものが多い。
そもそもこの選手は病院で「脱水と低血糖」と診断されたというが、20km以上走った後なんだから血液濃縮傾向にあり血糖値が下がっているのは当たり前だろう。快走した早大の選手だって採血をすれば同様の診断になるに決まっている。
だから「脱水と低血糖」は原因ではないはず。他校の選手は誰も脱水などにはなっていない。コースコンディションは日差しがあったとはいえ、気温10℃程度で特に暑くもなかった。
では何が原因か。一言で言えばオーバーペースの結果、下りで脚にきた、ということだろう。
前年優勝の順大だから当然連覇を狙っている。ところがこの日は1区からおかしく、区間最下位のスタート。2〜4区も浮上することなく5区は18位でタスキをもらっている。この区間でなんとか猛追して優勝圏内に入ろう、と意気込んでスタートしたことは疑いない。頭には昨年まで3年連続区間賞をとった同大学の先輩・今井正人選手のイメージもあったろう。
その結果、今井選手の区間新のラップを上回るようなハイペースでとばしこれが仇になったと思われる。登りでいっぱいいっぱいになり脚も使ってしまい、下りの衝撃に筋肉が耐えきれなくなりいうことを聞かなくなった、ないしは痙攣・硬直をおこしたと思われる。
似たような症状はかつて早稲田の6区小林選手で見たことがある。箱根湯本まで下ってきて、ゴール前十数メートルで脚が立たなくなったが、残り距離が少なかったのが幸いしてなんとか這うようにたどり着いた。やはり下りの後にこういう症状が起こりやすいようだ。
そうなると今回の順大の途中棄権は少々早まったような気がする。仲村監督は「将来ある選手だから大事をとった」というコメントを残したそうだが、アキレス腱を切ったとか故障個所を再発した、とかなら「大事をとる」理由としてわかるが、今回は単なる(といってもかなり激しいが)筋肉疲労による一時的な症状。その場に腰をおろさせて、ゆっくり自分でマッサージさせて、可能ならストレッチングをさせ、ドリンクをゆっくり飲ませ、3分も待てば少くとも残り500mは歩くかゆっくりjogでゴールできたはず。
私自身も激しいアップダウンの連続する奥武蔵ウルトラマラソンで45km地点で一歩進むと大腿とふくらはぎが痙攣する同様の症状に見舞われたが、膝下を自分でしばるように圧迫してしばらく腰掛けていることで結局は75kmを完走できた。
仲村監督と審判員も、周囲(観客とテレビクルー)のなんとかしてやれという有言無言の圧力に負けてしまい、しばらく様子をみるという選択肢を採用できなかったのではないだろうか。選手自身も先を急がずに座ってなんとかするという対処をする心の余裕があれば、と残念に思う。
ただ、この日の順大5選手は5区の選手に限らず調子がおかしかった。1区も途中で大腿が痙攣しているような仕草を見せつつ、止まりそうになりながらようやく完走したし、他の選手もまったくペースが上がらなかった。チーム全体としてコンディショニングないしは疲労除去がうまくいっていなかったのではないかとも推測する。4区までに積もり積もったひずみが5区の自然の大地形を前に一気に悲劇的なかたちで表面化したのである。

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