2008年11月19日水曜日

渋井選手の体内センサーについて

で、レース内容の方だが、30kmまでは渋井さんの独走となり、テレビ解説陣も「このまま優勝してほしい」「大会新記録が期待できるペース」と、むしろまったりとしたのんびりムードのコメントに終始していた。
薄曇、気温15℃、湿度90%という好条件にも恵まれたので、いつかの高橋尚子選手のように暑さと強風に遮られたような大失速は起こすまい、と誰もが予想していたと思う。それにもう渋井さんは終盤失速はなんども経験しているわけだからさすがに今回は賢くなっているだろう、と。
ところが渋井さんの1kmごとのラップタイムを聞いているとどうもおかしい。3分30秒以上かかり始める。これでは5kmが17分半以上かかってしまうのでは?案の定、50秒以上離れていた加納さんがじわじわと詰め始めた。まだ坂にかかる前なのにこんなにラップが落ち始めていたら、もう35km以降は18分かかるでしょ、これはまた大失速だ、とこの時点ですぐ読めた。
そこで来るのは加納さんかと思いきや、なんと上がってきたのはマーラさんに追いつかれて後は落ちる一方と残念に思っていた尾﨑さんだった。普通は10kmまでを16分半でとばしてどんどん抜かれたら復活は不可能なもの。マーラさんの背中を借りているうちに、持ち直したようだった。加納さんにぐいぐい迫っているという状況下では、いくら渋井さんまでまだ30秒以上あったとはいえ、勢いは前4人の中ではダントツ。あれよあれよという間に先頭にまで躍り出た。終盤のきついところでも腰高のスムーズな走法はむしろ加速した印象。大逆転でゴールテープをきった。渋井さんは残念ながら「勝手に」失速したので、ともかくとして、その場合は普通は2番につけていた加納さんが勝つ者なのだが、さらにその後ろから勝者が出るというのは珍しい展開だった。それもマーラさんが来るならわかるが、いちど加納さんに振り切られた選手が来るというのは・・・。
ただ尾﨑さんは中盤でマーラさんが追いついてきて引っ張ってくれなかったら、こんなに持ち直したかどうかあやしいと思う。マーラさんにお礼の品ぐらい贈らなければいけないのでは?お姉さん、SWAC経由でね。
尾﨑さんとは2度お話ししたことがあるが、とにかくひたむきな「いい子」。頭もいいし、ユーモアも解してくれる。雰囲気はまだ20代前半という感じだけど、もう27歳なんだね。ロンドン五輪を目指すと言っていたので、ちょっと誤解していました。でも着実にゆっくりとステップを登ってきているので、本当に長く競技生活を続けることが期待できると思う。山下監督もそういう長い目で育てようとしているのがよくわかった。直接知っている選手が優勝するというのは嬉しいものだ。
渋井さんについてはなにをかいわんやである。快調にとばしている25kmとか30kmぐらいで、これくらいの体の余力があれば、どのペースでいけばゴールまで持つか、というセンサーがちょっと甘めに設定されているのだろう。
だから本人は決してやけっぱちでとばしているわけではなく、ゴールまでもつと思っているのに、体の余力の方が実際はたりていない。kのセンサーはスピードランナーほど甘い傾向があって、高橋尚子さんもシドニーやベルリンで最後の2.195kmは相当きつくなっているし、野口さんもアテネでは終盤迫られて危なかった。でも、少々ペースダウンしようともゴールまではなんとか行けていたのだが、渋井さんの場合はセンサーの狂い方が激しすぎる。今後の練習は、走り込みよりもスピード練習よりも、このペース感覚というかセンサーというか、こちらの修正に力点を置いたらどうか。そう忠告したい。

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