2009年8月21日金曜日

性別疑惑 その2

では実際にどんな検査が行われているだろうか。こうした検査に「ルール」は制定されていないが、前回の大阪大会でこのような場合に備えて僕たちが準備していたのは以下のような検査だ。
(1)外性器視診  内診台でのいわゆる婦人科診察
(2)内性器の画像診断  超音波やMRIを使って、子宮や卵巣の有無を確認する
(3)ホルモン採血  テストステロンやエストラジオールなどのホルモン値をみる
(4)染色体検査  通常の染色体検査に加えて、SRY遺伝子の有無を検査したりもする
この中で実は一番重要なのは意外にも(1)であって、これで「男性ホルモンがどのくらい体を形成する上で効いているか」がわかってしまう。もちろん髭とか喉仏とか体毛とか他にも男性ホルモン作用を判定できる箇所はあるが、これらは男女の差が外性器ほど明確でなく、後天的に操作されることもある。テストステロン(男性ホルモン)が出ているからといって男性とは決められないし(受容体の働きが欠損していることもあるから)、ましてY染色体があるから男性と単純にはいかない。
そうした「性分化異常」の方はもちろん世の中にごくまれにしか存在しないのだが、スポーツの世界大会のように特殊能力の世界上位だけが抽出されて争うような場面では、その頻度が濃縮された結果、案外多く見つかってくるということは容易に想像されるところである。
さて今回の南アフリカの選手については私は全く医学的情報を持っていないのでなんともいえないのであるが、家族の反応や出生証明書などを見る限り、少なくとも医学的に完全な男性が「偽って」出場していたのではないように思う。もしも性分化異常症である場合、世界選手権で金メダルを取る前の段階で「ひっそりと」指摘してもらう機会があって、例えばアンドロゲン不応症ならば精巣除去手術を受けるなどの方策がなされれば、競技力は凡人化してしまうだろうが、本人が精神的に深いダメージを負うようなことは避けられる。(本人でなく)南アフリカ陸連がこれまで性別検査を拒否してきたと報道されているが、もしもそうならば罪なことである。

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