2011年3月27日日曜日

運動性無月経の成因についての最近の考え方〜“Low energy availability”仮説

運動性無月経の成因についての最近の考え方を紹介する。これは食事の重要性に重きを置いた考え方で、“Low energy availability”仮説という。すなわち、「食事によるエネルギー摂取」から「運動によるエネルギー消費」を差し引いた「エネルギーの余裕度(=energy availability)」が少ないことが、運動のストレスよりも直接的に月経異常の原因になるというもの。正常な代謝を維持するためには体重50kgの選手で1日1250~1500kcalが必要とされるので、エネルギー摂取量は、運動による消費+1500kcal(+α)が必要ということになる。
したがって運動強度を上げていく場合、エネルギー摂取量をそれに伴って上げていかなければ月経異常を引き起こすことになるし、逆に言えば適切な摂取エネルギー増量を行えば月経異常は予防可能だということになる。

そもそも月経とは排卵という「妊娠をするための機能」に伴うものである。個体の存続さえ危ういような「飢餓」状態では、さらに余分なエネルギーを要する妊娠などという状況に陥ることは避けるべし、と脳が判断し排卵を差し止める、というのは太古より動物に備わった防衛本能といえるかもしれない。そうした脳からの「警告」を無視して、強度の高いトレーニングを行い続けた場合どうなるか・・・。何らかのしっぺがえしが体を襲う可能性が予見できるだろう。

無月経と骨量低下(骨粗鬆症)に摂食障害を加えた3つの徴候を「女性アスリートの3徴」と呼び、国際陸連もそのウェブサイトで警告を発している。トップランナーほど必要以上の「やせ」を追求してしまいがちであり、そのような精神的重圧が拒食、その反動としての過食といった食行動の異常を生みやすいことも知られている。「思い通りに減量できたけれども、無月経となり、長期化して骨粗鬆症となり、疲労骨折で走れなくなる。練習量が減るため、太ってはいけないから、食べては吐きの食行動異常が加速し、ますます無月経が長引き・・・」といった悲惨な悪循環を断たねばならない。

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