2011年12月20日火曜日

全日本実業団女子駅伝監督会議で月経状況のアンケート調査依頼

日本の実業団クラスの女子長距離ランナーの半数ないしはそれ以上が無月経ないしは稀発月経であると予想されている。これは正式な調査はないが、いくつかのチームの選手の話を聞いたり、日本代表チームの遠征に帯同してチェックをすると、だいたいそんなものである。
こうした選手の多くは現役引退後に、1年以内くらいにだいたい月経が再開しているようだし、その後に問題なく妊娠・出産に至っている選手も多い(と、数人の監督から話を聞いている)。
例えば、大学生の間はちゃんと月経があったが実業団入りして間もなく月経が止まった、という選手などは、10代後半のいわゆる思春期にしっかり卵巣機能を司る中枢の調節系が成熟して、それが20歳をすぎてから「冬眠」しているだけだから、引退後に運動量が減って体重が増加すれば、確かに卵巣機能は回復するだろう。
問題は、初経が中学であって、ほとんど規則的にならないうちにもう無月経となり、高校3年間もほとんど無月経ですごし、そのまま実業団入りしたような選手の場合である。こうなるとほとんど一度も月経が発来したことのない「原発性無月経」に近い。こうした選手は本来性機能が成熟すべき時期に全くそれがなされていないわけであるから、今さら20代後半になって現役引退したからといって簡単に排卵がおき、月経がくるようになるのか。ひょっとすると結婚後も無月経が続いて不妊治療を必要としたりしているのではないか。
こういう仮説から、引退後の元実業団女子長距離走選手を対象にアンケート調査をしようという発想が生まれた。
これを日本陸連医事委員会で承認してもらい、今回「引退後の女子長距離走選手の卵巣機能と妊孕性に関する調査」を計画したというわけだ。
日本陸連が「元選手」の名簿を持っているわけではないから、この調査には、現場の実業団チームの監督さんやマネージャーの方々の協力が欠かせない。各チームからそれぞれのOG向けにアンケートを発送してもらうわけだ。
というわけで、その調査をアピールする大チャンス、先日仙台で行われた全日本実業団女子駅伝前日の監督会議で10分程度の時間をいただいて、アンケート調査の主旨説明をしてきた。
なにしろその辺の体育学部の学生の修士論文研究ではなく、陸連お墨付きの調査研究だということを示さなければならない。緊張した。
幸い、第一生命・山下監督や大塚製薬・河野監督の強力な後押しも得られ、目的とするところは各チーム関係者に伝わったのではないだろうか。質問が出なかったのがむしろ心配だが。
調査期間は1月いっぱい。もし実業団OGでこの調査用紙が送られてきたらぜひ協力して欲しい。あるいは自分も調査対象のはずなのに調査用紙が来ないという場合には、ぜひ僕に問い合わせて欲しい。
世界各国には日本のような実業団長距離選手のような大きな選手プールはない。一部のエリートランナーだけが、スポーツメーカーなどをスポンサーに個人活動をしているだけであるから、その数も圧倒的に少ない。高校駅伝をめざす若年時期からからそのまま継続して長距離走を競技しつづけているというのも特異な環境である。
医学的にも「運動性無月経のその後」というのはわかっていないことが多い、興味あるテーマなのである。

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